コラム / ストーリー

    nonnativeと『GORE-TEX』、 藤井隆行が考えるデイリーウェア

    ゲストライター
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    ものづくりを通して知った、GORE-TEX プロダクトの必然

    ある人は上品で機能的なアーバンギアとして。またある人は悪目立ちしない、こなれたファッションピースとして。nonnativeというブランドはその名の通り、多くの洒落者たちに求められながらもどこかの系統・ジャンルに属さない、独自の立ち位置を貫く異色な存在。そして、それはこのブランドで20年以上にわたってデザインを行ってきた、藤井隆行(ふじい・たかゆき)さんの洋服遍歴とそのまま重なります。

    ワークやミリタリーなどのオーセンティックなスタイルに始まり、モードの美意識やストリートウェアのカルチャー性まで、彼のバックボーンにはあらゆる洋服の影響が垣間見られます。
    それはアウトドアに象徴されるユーティリティウェアももちろん例外ではありません。彼がファッションデザイナーでありながら、GORE-TEX プロダクトの個性や成り立ちを熟知しているのは、そうした服への深い造詣があるからこそ。

    「17、18歳のときに北海道に行くことになって、そのためにパタゴニアのシェルを買って行ったんです。確かデニムを履いていて、足元はDannerのブーツ。着いたら雪がすごく降っていて、気づいたら脚だけがビショビショで。『本当にGORE-TEX プロダクトは濡れないんだ、スゴいな』と思ったのを覚えています」

    取材は、中目黒にあるnonnativeのショールームにて。

    今でこそnonnativeをはじめとする複数のファッションブランドがGORE-TEX プロダクトをライフスタイルウェアとして展開していますが、10数年ほど前までは、その使用はアウトドアやアスレチックシーンに限定されたものでした。そんな折にあって、藤井さんは日常着の新たな可能性を、機能的なGORE-TEX プロダクトにいち早く見出しました。

    「それまでにもいろんな防水透湿素材や新しい技術を使ってきましたが、 “やっぱり『GORE-TEX』じゃないと嫌だな”と思うようになっていって。実際に使わせてもらって、やっぱりこれじゃなきゃダメだとわかりました」

    GORE-TEX プロダクトでなくてはダメな理由。藤井さんはそのひとつに「テストの厳しさ」を挙げます。

    「GORE-TEX プロダクトは機能性はもちろん高いんですが、すべてテストを通過しないと製品化できません。正直、防水透湿のウェアの良し悪しを着た瞬間に実感するのは難しいと思います。でも、長時間着ていたら、絶対に差が出てくるはず。そんな信頼があるんです」

    今や『GORE-TEX』のロゴと機能は多くの人が知るところ。しかし、nonnativeのGORE-TEX ウェアは、素材使いの意外性やミニマルなデザインゆえか、一見そうとわからないものがたくさんあります。

    「もちろん、『GORE-TEX』の文字が入っていると喜んでくれるお客さんたちがたくさんいます。だけど、nonnativeはGORE-TEX プロダクトのことを理解して、アウトドアブランドとは違う視点で取り入れているところを評価してもらえていると思うんです」

    nonnativeと他ブランドとのコラボレーションから生まれた、GORE-TEX プロダクトテクノロジーを採用したアーカイブシューズ。

    広がる可能性と自分にしかできないこと

    藤井さんがnonnativeで初めてGORE-TEX ファブリクスの技術を使ってものづくりを行ったのは、2008年の秋冬コレクションでのこと。マウンテンパーカとダウンという、正統なアウトドアの文脈を汲んだものでした。

    「当時、取り組みを始めるにあたってゴア社のラボに行って丸1日、研修を受けました。最後に理解度を確かめるテストを受けたのを覚えています」

    GORE-TEX プロダクトテクノロジーの技術を熟知し、ファッションの観点から新たな可能性をもたらすこと、そうした条件が揃って初めて、ファッションデザイナーはGORE-TEX プロダクトテクノロジーを使ったものづくりが叶うのです。

    GORE‑TEX ファブリクスを採用したnonnativeの最新コレクションアイテム。

    体が濡れないGORE-TEX ファブリクスは、実際につくり手としてその機能性に触れると、ファッションとはまた別のおもしろさがあると藤井さん。そこから時間は流れ、GORE-TEX プロダクトを度々ものづくりに取り入れてきました。なかでも2016年の秋冬コレクションで、草木染めのコットンツイルを使った、中綿入りのジャケットが印象に残っていると語ります。

    「表生地を京都で染めてもらって、それをGORE-TEX メンブレンにラミネートしてもらいました。これは僕らにしかできないことだったなと、今も思っています。発想の方向性や、それを実現させたっていうこと自体が。GORE-TEX プロダクトテクノロジーを使って一通り色んなことをやらせてもらって、そういうことに挑戦しないとおもしろくないよな、なんて考えていた気がします」

    ©︎nonnative
    2016年の秋冬コレクションの草木染したコットンツイルにGORE-TEXを張り合わせた2.5層のパフコート。

    nonnativeの寡黙な服に込められた遊び心が垣間見られるエピソード。そして今では、ウェアとしての防水性が保証されたGORE-TEX プロダクト以上にWINDSTOPPER® プロダクト by GORE-TEX LABSが藤井さんのコレクションには頻出するようになりました。藤井さんは、デイリーウェアに求めている機能について「基本的には防風性と透湿性です」と語ります。

    コンクリートとアスファルトの街中で、WINDSTOPPER® プロダクトの防風・透湿性が真価を発揮すると話す藤井さん。

    「電車に乗ったら人がたくさんいて、汗をかいて、外に出たら風が強いとか、そういうシチュエーションが東京には多いじゃないですか。逆に、雨が降ってきたら傘をさせばいいし、どこかの建物に入ればいい。1時間も雨に打たれることとかって、まずないですよね」

    nonnativeにとっては、あくまでデイリーウェアとして過不足のない機能性をもつGORE-TEX プロダクト。同じGORE-TEX ファブリクスを採用していても、過酷な自然環境や極限状態での活動を支えることが目的のアウトドアギアとは、そもそも見据える場所が大きく異なります。そうした極端な状況以外の日常では、できうる限りオールラウンドに対応するように、という想いが藤井さんにはあるようです。

    実際、パンデミックを抜けて海外渡航を再開した藤井さんは出張時にも自身が手がけたGORE-TEX ウェアに袖を通して、旅程の大半を過ごしたのだそう。先の初春に訪ねた久々のパリでは気温も不安定で暑さと寒さがコロコロと変わり、おまけに強い風にもさらされたと言います。「そのときは、ずっとWINDSTOPPER® プロダクトしか着ていなかったんじゃないかな」と藤井さん。

    WINDSTOPPER® プロダクト by GORE-TEX LABSを採用した製品は、内側のnonnativeタグに添えられたラベルで識別できる。

    そして藤井さんにとって、カジュアルウェアは手入れのしやすさも汎用性を高める機能として重要なことだといいます。

    「知らない人が多いかもしれないけど、GORE-TEX ウェアは本来洗えるんです。むしろ、洗って汚れを落とした方が長持ちするし、乾燥機やアイロンで熱を加えることで表面のはっ水性も回復します。何より僕はただのパーツの組み合わせだった洋服が、洗濯機と乾燥機にかけて立体的になっていくのが好きなので、GORE-TEX ウェアだってすぐに洗うんです」

    今やnonnativeと藤井さんのものづくりには欠かせない存在となったGORE-TEX プロダクト。企画やテストに時間を要するため、毎シーズンのコレクションはGORE-TEX ウェアやシューズから企画を始め、そのサンプルアップに合わせて展示会の日程を決めているそうです。

    「僕がつくりたいのは、ずっとその服のままで過ごせるような普段着なんです。海外でも東京でも、自宅のリビングでも。寝るときもそのままの格好でいられたら最高です(笑)。そのために、やっぱりGORE-TEXプロダクトは必要なんですよ」

    藤井さんが着ているのは、WINDSTOPPER® プロダクトby GORE-TEX LABSを採用したnonnative の24秋冬コレクションのジャケット“COACH JACKET P/N TAFFETA WITH GORE-TEX WINDSTOPPER”。

    nonnativeでは、2008年からGORE-TEX プロダクトテクノロジーをコレクションのキーアイテムに採用し続けているという。

     

    藤井 隆行 / ファッションデザイナー
    1976年生まれ。武蔵野美術大学を中退後、ショップスタッフなどを経てnonnativeに2001年からデザイナーとして参加。モードにもストリートにもカテゴライズし切れない、独自のクリエイションを20年以上にわたって続けている。
    https://nonnative.com/

     

    原稿:今野壘 写真:延命悠大 編集:ユーフォリアファクトリー

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