コラム / ストーリー

    伝統と革新の融合で、世界へ羽ばたくリーガルの革靴。

    ゲストライター
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    スピーディかつ丁寧に。リーガルコーポレーションが誇る量産工場へ。

    リーガルコーポレーションといえば、良質な革靴で有名なメーカーですが、実はGORE-TEX プロダクトとの関わりは、いまから25年前に遡ります。GORE-TEX ファブリクスを採用することで、雨に弱いという革靴の弱点を見事克服。今回は、そんなリーガルコーポレーションの工場にお邪魔して、随所に職人技が光る工程を見学させてもらいました。

    工場を訪れて、まず驚いたのが予想以上の工程数でした。
    130もの工程があるリーガルコーポレーションのグッドイヤーウエルト式製法。これはアッパーと中底、細革をまずすくい縫いしてから、さらにアウトソールと細革を出し縫いする作りのこと。特徴としては一般的なセメント式製法に比べて、堅牢で型崩れしにくい靴を作り出すことができます。もちろんその分、手間もかかります。

    製甲、釣り込み、底付け、仕上げ。靴作りは大きく分けるとこの4つの作業に分けられますが、リーガルコーポレーションの靴作りはさらに細かく分かれていて、行程全体を追っていくと駆け足で回っても優に1時間以上かかります。それだけ工程が多いのです。

    ですが、ひとつひとつの作業はすごいスピードで進んでいきます。
    丁寧さとスピードの両立。それを支えているのが職人さんたちの熟練の技です。
    底付け作業などは専用のミシンを使いますが、微妙なカーブも繊細な手つきで躊躇なく縫い込んでいきます。

    製甲を組み立てていく作業。

    「革にも伸び方向や、どこを切れば無駄がないかなどいろんな要素があるので、裁断にも経験値が必要です。製甲の作業場にはさまざまな種類のミシンがありますが、それぞれ用途で使い分けるので、流れが悪くならないように配置する必要があるんです」

    こう教えてくれたのは製造部長の濵田剛さん。これらはあくまでも一例で、他にも細かい技術がたくさんあるようです。

    中でも、ワニという道具を使って木型にアッパーを沿わせる、釣り込み作業の調整と仕上げは職人さんの手作業です。ワニという道具を使って、驚くほどの早さで仕上げていきます。

    革を木型に吸い付くように引っ張って伸ばす「つり込み」という作業。

    「革には個性があるので、機械で均一にやるというのが難しい。この作業を手でやることで、左右の高さを揃えたり、甲の質を揃えたりと、細かい仕上げが可能になります」

    通常でも丁寧な仕事ぶりですが、GORE-TEX ファブリクス内蔵のモデルになるとさらに繊細な作業になると言います。

    「内部はGORE-TEX ファブリクスを使ったブーティ構造なので、思い切り引っ張ってしまったりするとたるんでしまい、絶妙な力加減が必要です。」

    シューズの内側にGORE-TEXブーティが取り付けられたところ。

    従来のグッドイヤーウエルト式製法では、中底に釘を打って固定しますが、GORE-TEX プロダクトの場合は防水性を確保するためにブーティ加工を施しているため釘を打てません。ですから糊付けするに留めています。靴作りの製造過程において釘での固定は欠かせないのものですが、1本も使えない分、当然難易度は上がっていきます。

    アッパーに靴底を取り付けていく底付け作業は、グッドイヤーウエルト式製法でも肝となるポイント。グッドイヤーウエルト式製法の場合は、底付けの際に、すくい縫い、出し縫いと、2度針を通す必要があります。そのため、GORE-TEX ファブリクスを採用した製品には、その防水性を損なわないために細心の注意が必要なのです。

    グッドイヤーウエルト式製法に必要とされているすくい縫いと出し縫い。

    ほかにもバフ掛けなどの仕上げ作業、検査、箱詰め作業など、滞りなく進む靴作りの工程は見ているだけで気持ちがいいもの。どの工程に関してもすべて人の手が入り、丁寧に作られていきます。


    1日に作れる数も一貫して靴を作る工場としては、かなり多い部類に入ります。クオリティを保ちつつ多くの靴を生産できるのは、やはりリーガルコーポレーションの積み上げてきた歴史のなせる技です。

    靴箱に入れる前に、必ずGORE-TEXプロダクトの証としてのハングタグを靴に。

    リーガルが革靴の先に見る未来。

    「枠を越え、創造的に」
    リーガルコーポレーションのポリシーのひとつに掲げられている言葉です。
    クラシックな製法にこだわるだけでなく、先駆的な取り組みを積極的に行うということ。いちはやく日本にグッドイヤーウエルト式製法を取り入れた先駆者がリーガルコーポレーションであることからもわかります。その後も、1976年のDIYモカシン、2000年のパターンオーダーシステムなど、さまざまな新しい取り組みを続けてきました。2010年には東京・渋谷にコンセプトショップ「REGAL Shoe & Co.」もオープン。現在では「REGAL Shoe & Co.」ブランドとしてさまざまな挑戦的かつ斬新なモデルもリリースしています。

    「厳しい品質基準というのもリーガルコーポレーションの変わらぬ特徴です。例えば、他社だったら使える素材もリーガルでは使えない、ということもあります」

    そう教えてくれるのは商品企画部の森田幸之介さん。リーガルの商品企画、「REGAL Shoe & Co.」ブランドのディレクターを務める人物です。ここからは、森田さんにリーガル社とGORE-TEX ブランドの関係などについて伺っていきます。

    「REGAL Shoe & Co.」ブランドのディレクターを務める森田幸之介さん。

    「リーガルコーポレーションがGORE-TEX ブランドと出合ったのは1999年。2001年には、別のブランドで、ステッチダウン製法のシューズを商品化しています」

    その後、お家芸とも言えるグッドイヤーウエルト式製法でのGORE-TEX プロダクトテクノロジーの導入に挑戦し、量産に成功しました。

    「先人達の苦労はかなりのものだったと思います。それでなくても行程が多いグッドイヤーウエルト式製法に、さらにGORE-TEX プロダクトテクノロジーを組み込むわけですから。試行錯誤もかなりのものだったと聞いています」

    2015年にはGORE-TEX SURROUND® プロダクトテクノロジーを搭載したモデルも登場します。
    GORE-TEX SURROUND® プロダクトテクノロジーとは、GORE-TEX ブーティに加えて、本底にハニカム状の通気孔を装備したもので、これによって、靴底から湿気を逃がすことを可能にし、同時に防水性も両立させることに成功。濡れと蒸れを克服した、靴の360°全方位からの高い透湿性と防水性を実現したシリーズです。
    もちろんグッドイヤーウエルト式製法でこのテクノロジーを搭載したのはリーガル社が世界初。リーガル社とGORE-TEX ブランドがジャンルの垣根を越え、手を携えることで無かったものを創り出す。まさに前述した「枠を越え、創造的に」というポリシー通りの取り組みといえるでしょう。

    GORE-TEX SURROUND® プロダクトテクノロジーを搭載したリーガルシューズ。

    「僕個人の考えとしては、クラシックな革靴にもちろんリスペクトはありますが、日本の気候を鑑みると、どうしても履くシーンが限られてくる部分があると思います。それでもGORE-TEX プロダクトテクノロジーを搭載することで、気候を問わず履けるようになる。それはつまり今までの革靴の価値を上げることだと思うんです」

    GORE-TEX プロダクトテクノロジーを取り入れることによって、若者層により革靴を普及させたいというねらいもあるようです。

    「『GORE-TEX』というと、機能面はもちろんのことファッションの世界でもひとつのアイコンになっている存在です。革靴=ビジネス、ドレスという時代から、もう少しファッションシーンに合わせたカジュアルなものを展開しやすい。いまではさまざまなファッションブランドさんとのコラボレーションもさせてもらえるようになりました」

    従来のドレスシューズだったらクッション材にコルクを使うところを、スポーツシューズなどにも採用される機能性インソール材・オーソライトを採用するなど、日常的に革靴を履かない人にもフィットしたモデルも展開しています。

    「自分の足に馴染んでいく、という意味ではコルクは素晴らしいですが、それにはやはり時間がかかります。もっとカジュアルに革靴を楽しんでほしくて、購入してすぐにも履き心地の良いものを作りたかったんです」

    履き心地に繋がるクッション材を細かく重ねたレイヤー。

    これからは、おもに「REGAL Shoe & Co.」のモデルにおいて、型押しのレザーも積極的に使っていきたいと森田さんは言います。

    「型押しにすることで、ファッション性が上がるのはもちろん、傷も目立ちにくくなりますし、それによってよりカジュアルに履いていただけるのではないか、という狙いもあります」

    革靴を履き慣れない人からすると、お手入れが大変というイメージもあるかもしれません。森田さんのメンテナンス方法を伺ってみました。

    「GORE-TEX ファブリクスが入っていても革靴とまったく一緒で問題ありません。まず馬毛ブラシをかけて、クリーナーでしっかり汚れを落とします。その後で乳化性のシューズクリームをムラにならないように塗っていき、最後に撥水スプレーをかければOKです。GORE-TEX プロダクトテクノロジー搭載モデルの特性上、雨の日に履かれる方が多いと思うのですが、濡れた後は風通しの良い場所で24時間ほど乾かすのをおすすめします。それからこれはGORE-TEX SURROUND® プロダクトテクノロジー搭載モデル限定なのですが、底のハニカム構造のところに小石などが入り込んでしまうことがあるので、それは小まめに取っていただければ、常に最高の透湿性で履くことができます」

    森田さんが愛用している革靴のケアセット。

    最後に森田さんに今後の展望を伺ってみると「REGAL Shoe & Co.」は、海外進出にも力をいれていくとのこと。

    「昨年から海外に試験的に出店していて、パリのセレクトショップでも展開しています。2024年秋冬シーズンからはさらにヨーロッパでの展開数を増やす予定です。クラシックとテクノロジーの融合というスタイルで、新しい革靴の世界観を日本から世界へ発信していきたいです」

    日本の物作り、歴史あるグッドイヤーウエルト式製法、機能的なGORE-TEX プロダクトテクノロジー。その3つが手を携えた先に見えてくる、強いMADE IN JAPANの再興。それはリーガル社のような、常に新しい取り組みを行なっている企業が牽引していくはずです。

     

    株式会社リーガルコーポレーション
    https://www.regal.co.jp/shop/default.aspx

    REGAL Shoe & Co.

    REGAL MENS ゴテックス シューズ

    REGAL WOMENS ゴアテックス シューズ

     

    原稿:櫻井卓 写真:谷川淳 編集:ユーフォリアファクトリー

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