コラム / ストーリー

    機能も環境も妥協しない。 THE NORTH FACEが選んだ次世代GORE‑TEX プロダクト

    ゲストライター
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    THE NORTH FACE が「GORE‑TEX」を選ぶ理由

    「NEVER STOP EXPLORING(飽くなき探求心)をスローガンに、アウトドアの可能性を広げ続けるTHE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)。

    1966年にカリフォルニアで誕生して以来、登山家や冒険家のために高機能なアイテムを開発し、極限環境での耐久性と快適性を追求してきました。その技術力は、都市生活におけるアクティブウェアとして、またファッションアイテムとしても高く評価されています。

    そんなTHE NORTH FACEが初めてGORE‑TEX ファブリクスを採用したのは、1978年にカタログに初登場した「Windjammer」。その後も、ゴア社の防水透湿性素材を採用し、濡れと蒸れに強いアウターガーメントとして人気を集めています。

    パフォーマンスグループ・デザイナーの岩野太一さん。

    「デュラビリティ(耐久性/持続性)からくる安心感があるんです。とくに、高所登山や危険な場所に行くことを想定した製品では、GORE‑TEX ファブリクスを選ぶ場面が多いですね」と語るデザイナーの岩野太一さん。

    同じくデザイナーの石原彰乃さんは、「GORE‑TEX ファブリクスは何度も試験を重ねたうえで製品化されているので、透湿防水性の数値はもちろん、メンブレンと組み合わせる素材の相性や発色も含めて安定感があります。ゆえに量産してもトラブルが少なく、思い通りの製品をつくることができるんです」

    「お客様からの信頼が厚く、GORE‑TEX プロダクトを着ておけば大丈夫という方が多くいらっしゃいます。その背景にはアウトドア専門店の方々からの高い信頼があり、それがお客様にも伝わっているんだと思います」そう語るのは、マネージャーの千葉弥生さん。

    デザイナーの石原彰乃さん。

    パフォーマンスグループ・マネージャーの千葉弥生さん。

    今回話を聞いたのは、登山、トレッキング、アルパインクライミング、スキー、スノーボードなどマウンテン系の商品を開発するメンバーです。彼らにとって2025年は挑戦の年となりました。というのも、これまで慣れ親しんできたePTFE素材(フッ素樹脂)のメンブレンから、より環境負荷の少ないePE(延伸ポリエチレン)メンブレンを採用した次世代GORE‑TEX プロダクトへの切り替えが本格化する年だからです。

     

    次世代GORE‑TEX プロダクトへの切り替え

    革新的なePEメンブレン採用の次世代GORE‑TEX プロダクトは、従来品と同様に防水性・防風性・透湿性および長い製品寿命を備えながら、原料調達から消費者による廃棄に至るライフサイクル全体でのPFASフリー*を実現させました。

    また、ePEメンブレンがより薄く軽量に仕上がっていることに加え、リサイクル生地、原液着色生地、無染色生地などを積極的に採用することで、カーボンフットプリントも削減されています**。

    *有機フッ素化合物(パー及びポリフルオロアルキル物質)を使用せずに製造していますが、微量含まれる可能性があります。
    ** 質量の減った革新的なメンブレンと厳選したテキスタイルを組み合わせたラミネートに基づく(Higg MSI 測定)

    次世代GORE‑TEX プロダクトテクノロジーを採用した、マウンテンラウンダージャケット。

    「PFASの一部は環境や人体への影響が懸念されるため、欧米を中心に規制が始まっています。当社としても、環境配慮型アイテムにフッ素フリーの撥水材を用いたアイテムを6年ほど前にローンチしていますが、それ以降も継続してPFASフリー対応を行うために動いていました。また、リサイクル生地の採用を増やすなど、環境負荷低減への取り組みを進めています」(マネージャー千葉弥生さん)

    ePEメンブレンの登場は、「ついにGORE‑TEX ブランドからも!」という喜びに満ちたものだったようです。その一方、アウトドアでの安全性を優先するメーカーとして不安もあったと言います。

    「歴史的にも、従来のGORE‑TEX ファブリクスがあまりにも素晴らしかったため、新しい素材に対する心配はありました。しかし、優れた防水性・透湿性が担保されており、問題ないレベルであると判断しました」(デザイナー・岩野太一さん)

    唯一の懸念点は、フッ素を使用しない撥水剤にあると語ります。

    「フッ素を使用しない撥水剤は、これまでのものよりも水が球になって転がっていきにくくなる場合があります。それは、撥油性に劣るため防汚性が弱く、手の脂だけでも汚れの原因になってしまい撥水性能を下げてしまう可能性があるためです。そのため、こまめに洗濯していただき、洗濯後はしっかり乾かしてから熱をかけて撥水性を復活していただくよう啓蒙していく必要があると考えています」(マネージャー・千葉弥生さん)

     

    沿岸のプラスチック廃棄物から生まれた マウンテンラウンダージャケット

    25年春夏シーズン、パフォーマンスカテゴリーで次世代GORE‑TEX プロダクトテクノロジー採用製品となるのは、『マウンテンラウンダージャケット』『クライムライトジャケット』『ハイカーズジャケット』の3モデル。マウンテンラウンダージャケットに使われている表生地は、コスタリカ沿岸地域のプラスチックごみの海への流入阻止を目指す、BIONIC社とゴア社の協働により生まれました。

    100%リサイクルポリエステル生地のうち50%は、コスタリカ沿岸地域において回収されたプラスチック廃棄物を使用しているのが特徴です。

    3モデルのジャケットに使用されている革新的なePEメンブレン採用の次世代GORE‑TEX ファブリクス。3モデルとも裏地には100%リサイクルの原液着色生地が使われています。また、クライムライトジャケットとマウンテンラウンダージャケットの表生地には100%リサイクル生地が採用されています。

    「マウンテンラウンダージャケットはエントリーモデルとして、仕様やデザインを考えていきました。そのなかで最適な生地として選んだのが、たまたまコスタリカ沿岸のプラスチックゴミ由来のサイクル生地だったんです。そのことは、私たちからしても驚きでした」(デザイナー・石原彰乃さん)

    ハイカーズジャケット(左)
    ロングディスタンスハイキングに最適なモデルとして2024年に発売され人気急上昇中。大型ポケットを配置することで、ザックを下ろすことなく地図やスマホなどを取り出せるようにしている。また、アクセスファスナーを採用しており、対応のシャツやミドルウェアと合わせれば、ジャケットを着たままそれらのインナーのポケットにアクセスできる

    クライムライトジャケット(中)
    THE NORTH FACEを代表する人気定番モデル。GORE‑TEX プロダクトテクノロジー採用モデルとして広く知られていることから、次世代GORE‑TEX プロダクトへの切り替えを進めた。メンブレンがより薄く軽量になったことで、従来よりもアクティブな仕様に変更。新たに脇にベンチレーションを付け、着たままでも快適に過ごせるようにしている。シルエットもゆったり目に変更された

    マウンテンラウンダージャケット(右)
    エントリーモデルとして、2025S/Sより新登場。サイズ感や仕様など初心者でも快適に着られるよう設計。エントリー向けながらヘルメット対応のフードにするなど、本格的にアウトドアを楽しむようになっても使い続けられる工夫もされている

     

    長く自然の中で遊びたいから 環境負荷低減を目指す

    THE NORTH FACE製品の開発・製造・販売をおこなっているゴールドウインでは、全事業所ペットボトルの持ち込みが禁止など、環境負荷低減への取り組みを積極的におこなっています。また、直営店の各店舗に衣服回収ボックスを設置し、素材循環を即すなどの取り組みもおこなわれています。

    一方、高所など極限環境に対応するアウトドアウェアといえば、人智を尽くした素材開発の最先端ともいえる領域でした。しかし、近年は環境への配慮が業界全体で謳われるようになっています。その変化は、新製品開発にとって足枷とならないのでしょうか。

    「もちろん、これまで使っていたハイテクなバージン素材のほうが、より良い機能が出せるものもあります。しかし、それによって自分たちの遊び場をなくしてしまう可能性があることを考えないといけません。自然に限りがあるとわかった現在、環境負荷の少ない素材を使い、従来と同じ機能を目指すことが大前提となっています」(マネージャー・千葉弥生さん)

    「5年ほど前までは、環境配慮型素材に対して細かな不満があったのも事実です。しかし、最近はとても進化しており、かつてのようなストレスはほとんどありません。マウンテンラウンダージャケットのように、最適だと思って選んだ生地が、実は沿岸のプラスチック由来のリサイクル生地だったみたいな例は増えています」(デザイナー・石原彰乃さん)

    最後に、環境に配慮したこれからのものづくりについて、それぞれの意気込みや想いを伺いました。

    「さまざまなアクティビティを楽しむなかで、気候変動を体感する場面が増えています。私がTHE NORTH FACEで働いているのは、アウトドアアクティビティを楽しむことが大好きだから。その楽しさをこれからの人たちにも伝えていきたい。その一方で、私たちのギアを使ってくれる方々が、自然の中でトラブルが起きないようにするのも使命です。そのバランスをうまく保ちながら、人類が長くアウトドアで遊べるものづくりをしていければと思います」(マネージャー・千葉弥生さん)

    「自然の中で遊ぶ人を増やしたい。THE NORTH FACEはその足がかりになれるブランドだと考えています。自然に行ってみたいと思えるデザイン、環境負荷の少ないものづくり、長く着続けたいと思えるものづくり、それでいて循環可能なアイテムを今後もつくっていきたいと思います」(デザイナー・岩野太一さん)

    「アウトドアウェアといっても洋服ですので、消費されてしまうものです。そこを踏まえたうえで、GORE‑TEX ファブリクスのように長く使える素材を使いながら、長く愛用できるものづくりをしていきたい。そんな文化が醸成されるよう、努めていきたいです」(デザイナー・石原彰乃さん)

    アウトドアが大好きだからこそ、自然に優しい、環境負荷の少ないものづくりをしていきたい。そんな想いが伝わってきました。機能性と環境負荷低減を高いレベルで融合させたものづくり。THE NORTH FACEもGORE‑TEX ブランドも描いている未来は共通しています。

    ハイカーズジャケット:メンズウィメンズ
    クライムライトジャケット:メンズウィメンズ
    マウンテンラウンダージャケット:メンズウィメンズ

     

    原稿:富山英三郎 写真:塩川雄也 編集:ユーフォリアファクトリー

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