コラム / ストーリー

    名前のつかない瞬間をハンカチに。山岳収集家・鈴木優香の山歩き

    ゲストライター
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    純粋な感覚を求める、現在の登山ライフ

    風を受けてふわりとなびいて、光に溶け込む山の風景ーー。テキスタイルに落とし込まれた写真は、鈴木優香(すずき・ゆか)さんがこれまで出合った美しい瞬間を、拾い集めるように撮影した山行の記録です。

    山岳収集家として活動する鈴木さんは、山で撮り溜めた写真をハンカチに仕立てるプロジェクト「MOUNTAIN COLLECTOR」を主軸に、写真や執筆、デザインなどの分野で表現活動を続けています。

    登山を始めたきっかけは学生時代。東京藝術大学大学院でプロダクトデザインを学んでいた当時、ゼミの活動の一環で訪れた山小屋でのひとときが印象的だったそうです。

    「大学院時代の先生が山岳部だったこともあって、ゼミのメンバーで山のなかで合宿をしたんです。東京藝術大学山岳部の所有する「黒沢ヒュッテ」で、初めて山小屋で寝泊まりするという体験をしました。ひんやりと澄んだ空気や、自然のなかで過ごす時間が、とても心地よかったのを覚えています」

    ©Yuka Suzuki

    はじめは関心が薄かったという登山ですが、現在では10年以上続く鈴木さんのライフワークになっています。大学院修了後は、アウトドアメーカーに入社し約4年間、デザイナーとして商品企画に携わりました。

    「職場の同期や先輩に誘われて、本格的に登山を始めました。一時期は、縦走登山や、どのくらいの高さや難易度に挑戦できるかという、向上心もあって。一通り挑戦できたので、その欲求もだんだんと落ち着いてきました。最近は、逆に日帰りの山を楽しんだり、海外のトレッキングに興味があります。達成感よりも、美しい風景や風を感じる心地よさといった、純粋な喜びを求める登山にシフトしてるのかもしれません」

    長く使えるGORE-TEX プロダクトの安心感と信頼感

    アウトドアメーカーで商品開発に携わり、GORE-TEX プロダクトの機能性についても精通している鈴木さん。同時に、ハイカーとしても長年製品を愛用し、信頼を寄せています。

    「防水透湿素材といえば、GORE-TEX ブランドというイメージが昔からありますね。当時は、レインウェアというと硬くてパリパリとした素材のものが多かったのですが、初めて買ったGORE-TEX 製品のレインウェアは動きやすく、驚いた記憶があります。実際に山では、急に雨に降られたり、雨は降っていないけど霧のなかを歩くことも多々あります。天候が変化しやすいフィールドで、携帯していれば安心感をもたらしてくれる存在ですね。畳むとコンパクトになるので、旅にも必ず持って行きます」

    GORE-TEX プロダクトテクノロジー搭載の愛用品たちは、旅の行動範囲を広げ、さらに自由にしてくれます。

    鈴木さんが登山するときに必ず持っていくアイテム

     

    「モンベルのダウンジャケットは高山で気温が低く、かつ雨降りな時には本当に便利です。このアイテムは、街中でもよく着用しています。また、レインウェアはもう3代目です。ここ数年は鮮やかな色より、アースカラーを選ぶようになりました」


    海外の旅先でも、隙あらば近くの山へ足を伸ばすという鈴木さんは、いつでも登れる服装で出掛けるそう。旅と登山の境界がシームレスな彼女にとって、用途別に細かく買い揃えるよりも、汎用性の高いアイテムが一つあればいい。そして、たくさん買い替えるのではなく、一度買ったものを大切に使う。鈴木さんがものを選ぶときのポイントは、GORE-TEX プロダクトの特性とマッチします。

    「どんな山でも、同じ装備で向かうことが多いです。調整するのは、バックパックの大きさくらいですかね。ものを選ぶ時は、修理しながらでも、長く使えるかどうかを基準に選んでいます。その点で、GORE-TEX プロダクトはリペアのサービスが充実していて、心強いです。実際に、ウェアに穴を空けてしまったときは、リペアセンターに預けて修復してもらいました」

    防水透湿生地そのものが劣化するまで、ずっと使い続けたいです、と鈴木さん。着心地についても、ユーザー目線で語ってくれました。

    「ベタついたり、透湿性が不十分と思うことがないのが、すごいところ。山のなかでは特に、そういう不快感を感じないことはとても重要なことだと思います。そこまで無理な山行はしないですが、風雨で過酷なシーンでも、ストレスがなく活動を助けてくれるのが、GORE-TEX ウェアだと実感しています」

    「ゲイターは靴の中に雪や雨が入ってこないようカバーの役割を果たします。雪山に登る時や強い雨の時、または道がぬかるんで、泥々になっている時に装着します。もう8年くらい使っているので年季が入ってきていますね。アイゼンで破いてしまっても、修理して使っています」

    山のなかで活動し、自然の美しさに日々接している鈴木さんに、サステナビリティへの意識についても伺いました。

    「山に登るからこそ、自然環境を大切にしたいという意識は強くあります。例えば長期のトレッキングの最中、どうしても洗濯しなければいけない時は、微生物によって生 分解される洗剤を使うなど細かいところにも配慮をしています。また、作品の売上の一部を自然保護団体へ客付することも継続的に行っています。 山のすばらしさや、自然のなかにいる心地よさを知っているからこそ、このまま後世に残したいと思っています」

    ©Yuka Suzuki

    自分だけの美しい瞬間を探し求めて、山岳を歩く

    山に惹かれる理由は、何度訪れても、常に新しい発見を得られるから。きれいな情景や、ハッとする光の瞬間。偶然の出合いが、鈴木さんを山に誘います。

    「自分では造り出すことのできない自然の造形に、とても興味があります。伸びやかな木々の形や、岩肌の色合い……そういった被写体に魅力を感じます。同じ山でも、季節が変われば色とりどりの花が咲いていたり、逆に枯れた草木が美しく見えたり。いつも新しい気づきがあり、おもしろいです」 


    山を歩き、目の前に現れた現象を、素直に切り取り、また歩く。その繰り返しで山岳の風景を収集していきます。

    「遠くの山を見渡すようなランドスケープも素敵ですけど、どちらかというと少し近い距離のものを撮ることが多いです。また、決定的瞬間を待っことはせずに、偶然のタイミングで出合うものを撮影しています。一般的に良しとされている風景ではなく、名前のつかない瞬間をいつも探していますね」 


    そんな刹那的な瞬間たちを、ハンカチに仕立てる活動が「MOUNTAIN COLLECTOR」。背景が透けるほど薄く軽い生地は、山のなかで受ける風の心地よさや、光が差し込んだ瞬間のきらめきが表現されています。

    「もともと布という素材が好きで、撮った写真を紙ではなく布にプリントするのは、私にとっては自然なことだったんです。好きなものと好きなものを組み合わせて生まれたプロダクトですね。私はいつも2枚くらい持ち歩いていて、山小屋で枕カバーに使ったり、ちょっとした日除けに首に巻いたりして使っています」

    これまで制作されたハンカチのパターンはおよそ100以上。山での視点、ささやかな喜びが、正方形に切り取られています。ハンカチは売り切れても再販はしていないそうで、まさに一期一会の魅力が詰まったプロダクトです。

    愛用しているカメラは、ヤシカの35mm一眼レフ

     

    GORE-TEX プロダクトとともに続く鈴木優香の旅

    「父からフィルムカメラを譲ってもらったのをきっかけに、写真を撮り始めました。フィルムカメラは枚数にも制限があるので、目の前の対象を見つめて、綺麗な瞬間を丁寧に切りとるような意識で撮影しています。このカメラはすごく軽くて、2年前のパキスタンK2の山行でも良き相棒でした」


    これまでで一番過酷な旅でしたね、と鈴木さんは笑って振り返ります。見せてくれたのは、パキスタンのカラコルム山脈に位置するK2のベースキャンプを目指して歩いた旅の写真でした。

    世界第2位の横高を誇るK2(8,611m)    ©Yuka Suzuki

    ハンカチの制作以外にも、個展の開催をはじめ、写真集の制作、自身が暗室で行う現像など、表現の幅をどんどん広げて活動する鈴木さん。訪れたい場所や、やってみたいことが、まだまだ尽きないそうです。GORE-TEX プロダクトは、これからも続く鈴木さんの新しい旅に寄り添い、サポートし続けていきます。

     

    鈴木 優香 / 山岳収集家

    東京藝術大学大学院修了後、アウトドアメーカーの商品デザイナーを経て独立。
    現在はライフワークとして世界中の山を旅しながら、道中で出合う美しい瞬間を拾い集めるように写真に収めている。

     

    原稿:田中優帆 写真:矢部真太 編集:ユーフォリアファクトリー

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